横浜国立大学教育学部附属鎌倉中学校
研究主任 小山内大地
(総合的な学習の時間・ユネスコスクール担当)
附属鎌倉中学校の「LIFE」
本校ではこれまで、総合的な学習の時間の授業を通してESDを展開してきた。本校の総合的な学習の時間は「LIFE」(Learning through Interaction & First-hand Experience)という名称で、’’Interaction’’(相互作用=人との関わり)、’’First-hand Experience’’(直接体験)を大切にした学びを展開することで、「自分の生き方を考える」時間としてきた。
近年では、子どもたちにとって共通の土台となる「鎌倉」という地域を題材として、生徒一人一人がどのGoalを意識して探究活動を進めていくか、自分の興味、関心をもとにテーマを設定して追究してきた。以下は、昨年度の鎌倉中学校での生徒による探究テーマの例である。
【具体的な探究活動(2022年度)】
2022年度のLIFE(第3学年)では、「地域の良さを見つめなおし、課題解決に取り組もう」というテーマのもとで、地域にある課題の解決に取り組む人と出会い、身近な地域の課題解決に向けた具体的な一歩を踏み出すことを目標に、探究活動を展開した。
(1)変わりゆく鎌倉の街並みに対し、街並みの風情を残しつつ、活用を提案した例
出会った人:小町通り 商店会長、鎌倉R不動産(空き家リノベーションを進める不動産業者)、被爆建物の保存に取り組んでいる市民活動家【修学旅行(広島)】
提言・行動: 地域の空き家や、歴史的な価値のある建物を、市民活動に有益な場所としてリノベーションしていく価値を提案。具体的な建物活用案をまとめて提示。
活動後の振り返り:探究を進めていく中で出てきた疑問を、実際に現地に行き、インタビュー調査をすることで自分では気付かない新たな情報が出てきて、勉強になった。本音で疑問をぶつけることで、相手との関係も深めることができた。
(2)伝統農業がなくなっていくことに疑問を感じ、どう自分事の問題とするかを提案した例
出会った人:農家の方【鎌倉、校外学習(山梨)、修学旅行(広島)】、附属鎌倉小学校 栄養教諭、附属鎌倉中学校 家庭科教諭
提言・行動:給食に伝統野菜を活用することを目指し、試作に取り組む。その結果について、シンポジウムを通じて鎌倉市長に提言。
活動後の振り返り:地域にはさまざまな課題が存在するが、それに自分なりにどう関わっていくか、(ジブンゴトにしていくか)が大切であるということに気付いた。
・活動のまとめ
子どもたちの活動の気付きを表出する場として、校内で「鎌倉未来会議」を開催し、在校生に問題提起をして、自分たちなりの解決策を練り上げたのちに、鎌倉市長や市民活動家に提言をするシンポジウムを開催した。子どもたちの気付きを鎌倉市に届けることで、一連の探究活動のゴールとした。
今後のESDの展開について
これまでLIFEを中心に担ってきたESDを、ユネスコスクールとして様々な場面で展開していくことが必要だと考えている。今までは一部で担っていたESDを全校でさらに展開していきたい。
ユネスコスクールとして、学校全体で取り組むためには、日々の授業において各教科で取り組む意識を高めていかなければならない。また、ユネスコチェアである横浜国立大学や、ユネスコスクールである附属鎌倉小学校と連携を取りながら今後のESDの在り方を模索していく。