EDUCATION&RESEARCH

教育・研究

グローバル時代に求められる力を養うための公民科教育

教育学部 小沢奈々


講義概要

 2022年度には法学演習A及び法学概論(一部)において、多文化共生をテーマにした授業を展開した。

 法学演習Aでは「外国人と法」というタイトルのもと、外国人労働者や難民の受け入れを拡大しつつある我が国において、今後課題となる多文化共生を法的観点から捉えることを目指した。我が国在住の外国人についての現状把握を行い、関連する法律分野を横断的に取り扱い、その背景にある法的問題の構造や本質の理解を試みた。具体的には難民条約や国連の役割をはじめとし、日本の難民申請・帰化の手続とその問題点、外国人の生活保護や参政権をめぐる近時の判例の動向、入管施設をめぐる問題、外国人の子供たちの不就学問題といった、近年よく報道されるトピックについて学んだ。また受講者は、愛川町のベトナム寺院・ラオス寺院を訪問し、インドシナ難民の方々にインタビューをした。難民として日本に来た経緯、1世・2世の日本への見方の違い、難民申請・帰化・行政上の手続などの法的手続で苦労した経験などについて話を伺った。演習内ではこうした話をふまえ、現在の難民をめぐる問題に今後どのように向かっていくべきかを中心に議論を進めた。

 法学概論では、1年生から4年生までの幅広い学年の学生を対象に、ブラジル日系3世の方に講演会をしていただいた上で、外国人労働者を取り巻く法的問題(特に労働問題)に関する事例問題をグループにわかれて討論した。日本人にとって当たり前のことでも、外国人にとってはわからないこととは何か、またこれをわかってもらうために私たちはどのようなことをする必要があるかについて受講生たちに考える機会を与えた。

以上の活動をふまえ、多文化共生の対象となる外国人・日本人双方の意見を総括し、多文化共生の課題としてどのようなものがあるかを考えた。

特徴・効果・独創的な点

 法学という領域では一般的に制度面から考察を深めるところに特徴があるのだが、他分野の調査方法を生かしてフィールドワークを実施し、人々の生の声を聞き、彼らの目線にたった上で、現状の制度を理解し、その問題点を考えるという手法をとった。学生たちは、制度をただ文字面上でおうのではなく、それが機能している現実を直視し、状況を総合的・立体的に考察する視野を得ることができた。

図1 ラオス寺院でインタビュー
図2 ブラジル日系3世の方による講演会①
図3 ブラジル日系3世の方による講演会②