教育学部 棚橋信明
概要
近代ヨーロッパの都市と市民層に関する欧文及び邦文の文献資料の講読を通じて,19世紀以降の近代化・工業化・都市化の進展にともなう都市社会の構造的転換と,こうした転換に対応した市民たちの行動様式や価値意識の変化について,政治文化史的に理解を深めることを目的とする。取りあげる文献資料は,市民層に関する国際比較を目的とするプロジェクトの研究成果である論文集の英語版及び日本語翻訳版である。通説的には,近代化とは経済的発展を重視する合理的思考をもった進歩的市民層が,封建的遺制を排除していく過程と理解されるが,このような過程は近代都市においも決して直線的に進んだものではない。近代においても市民たちの行動様式や価値意識には前近代の封建的・身分制的文化や都市共同体的伝統が複雑に作用し続けたのであり,こうした近代化における錯綜した文化的諸相について考察を進める。
特徴・効果・独創的な点
- ヨーロッパにおける近代化にともなう都市社会の構造的変化に関する多角的視点の獲得
- 近代ヨーロッパにおける市民の行動様式や価値意識に関する政治文化史的理解の養成
- 近代ヨーロッパの都市と市民層の政治文化史的諸相の理解における比較史的観点の獲得
論文
- ユルゲン・コッカ編著(望田幸男監訳)『国際比較・近代ドイツの市民―心性・文化・政治―』(ミネルヴァ書房,2000年)
- 棚橋信明「近代ドイツ市民層に関する歴史研究の展開―1980年代半ばに始動した研究プロジェクトの成果と今日的課題―」『横浜国立大学教育学部紀要 Ⅲ(社会科学)』第5集(2022年)